上達の指南
(6)まさかの三々入り 定番に
(寄稿連載 2013/12/24読売新聞掲載) 時代は変わるものですね。初めて打たれたころは、賛成する人がいなかった手が、今ではすっかり定番になっています。そんな最先端の手を開発したのは趙二十五世本因坊ですが、この碁では相手の溝上八段が打ちました。
【局面図】 こんな序盤から白1と三々に入るのですから、初めは好評というわけにはいきませんでした。いくら趙先生でも、さすがに早過ぎるのではないかと言われたものです。それが、今ではいろんな棋士が打って、今年を象徴する一手になりました。趙先生もびっくりでしょう。白7の後は、いろいろな変化が研究されています。
【実戦図】 黒1のツケから3とついで、白の生きを催促するのですが、白4と押さえるのが厳しい追及です。黒5のハネなら、隅は手を抜いて白6と開くのが有力です。隅は黒イとはねられても、白ロやハの利きを見て、ただでは死なない形です。手を抜いて他の好点に先行できるのが、白の自慢なのです。黒7とはねて断点を補えば、白8やニに回って足早です。
【参考図】 黒1と下がるのもあります。隅の白が危険なので、白2と手を入れれば無難です。黒3かAに一手必要です。白は4と開くことになります。黒に手が渡りますから、黒5などに開くのが有力。また、白2で3から出切るのもあって、これは超難解です。
来年も素晴らしい手がたくさん見られるでしょう。今からワクワクします。
(おわり)
●メモ● 加藤九段から、上達のコツを一つ。早碁で、打って終わりではもったいない。一手ずつ考える習慣をつけることが肝心と言う。終わったら、忘れる前に一度は振り返ってみること。打ちっ放しでは、何局打っても上達はおぼつかないでしょう。「時間つぶしにしかなりませんよ」と厳しい一言。
第38期棋聖リーグ
白 八段 溝上知親
黒 二十五世本因坊 趙治勲