上達の指南

加藤充志九段の「今年この一手」

(4)研究に裏付けられた自信

(寄稿連載 2013/12/10読売新聞掲載)

 国際的な交流が盛んとなり、互いの研究成果も取り入れますから、どんどん新しい打ち方が生まれています。結城十段は海外の棋士とも一緒に勉強して、最先端にいる棋士の一人です。

 【局面図】 黒1と単につけて変化したところです。白2の飛びはよくありますが、黒3のハネに、いきなり白4と切ったのには驚きました。中国の碁では記憶がありますが、日本では初めて見ました。結城十段は研究済みなのでしょう。それにしても勇気のいる決断です。

 【参考図1】 白1の切りに、隅を大事にするなら黒2の当てから4です。白7と下がって一段落。上辺はAの当てがあって白のすそが止まっています。それが白1の効果です。

 【参考図2】 白1とはね出す変化もあります。黒2の切りから4とついで、白7と押さえます。隅が黒4とついでありますから、上辺の白がすそ空きです。

 【実戦図】 黒1と反発したのは当然です。白2と逃げて、6の下がりに黒7のツギまではこうなるところ。白8の飛びが手筋です。黒11のハネに白12とハネ返して、黒13、15と当てつぎました。忙しい碁になっています。なかなか戦いが一段落しません。
 白18、20の抜きで隅がいい地ですし、中央の白も不安はありません。私は白が成功していると思います。
 結城十段の探究心がもたらした、新しい世界でした。

●メモ● 以前は、寄せの研究会が盛んで、参加者は成績もいいと評判だった。その研究会がなくなったら、「自分も寄せの勉強はあまりしなくなった」と加藤九段。研究会にも流行があるのだろう。アマチュアは詰碁も寄せも苦手な人が多いが、少しやればすぐ強くなるそうだ。

第39期名人戦最終予選
白 十段 結城聡
黒 五段 河英一

【局面図】
【参考図1】
【参考図2】
【実戦図】