上達の指南
(6)研究の進化 三本ハイ成立
(寄稿連載 2010/12/28読売新聞掲載) ◆第36期碁聖戦予選A (黒)二十五世本因坊・趙治勲 (白)九段・小林光一
趙治勲さんと小林光一さん。10~20年前なら棋聖戦七番勝負での顔合わせですね。
【実戦図】 白12の三本ハイに注目です。昔は悪い手とされていたのですが、この1、2年で主流となりました。黒15から白18までは定石化しています。
【参考図1】 以前は二本ハイから白1と飛ぶのが定石でした。しかし黒2とつけられると隅の黒地が大きい。右下隅の構えが白ならこれでいいのですが、黒ではさっぱりです。
【参考図2】 実戦は左上隅にすべりましたが、黒3と飛ぶ打ち方も多い。これは白A、黒B、白Cの狙いがあります。ここまでの研究を踏まえ、三本ハイが成立したのです。それですべったのですが、私は上が止まっている感じがちょっといやです。
【参考図3】 実戦の白18が肝要。これを知らないと三本ハイは打てません。白1から攻めると、逆に白2子が被告に。
【参考図4】 実戦の白8の三間バサミは大昔に打たれていました。その後、白1の二間高バサミが登場し、黒2と二間に飛ぶとしたものでした。参考図1の黒2のツケが出て、黒はかけて打つようになったのです。研究は日々進化しています。
二人が棋聖戦を打っていたころは二間高バサミの時代。年初の棋聖戦で打たれた手はその年の流行となります。来年の棋聖戦七番勝負で両対局者がどんな工夫を見せてくれるのか、今から楽しみです。
(おわり)
●メモ● 小林九段の顔には夏の日焼けのあとがまだ残る。プールや自宅周辺のサイクリングで、「少々度を過ごしたか」というほど真っ黒になった。対局の前は体力を消耗しないよう心がけ、基礎トレーニングを続ける。腹筋100回、腕立て伏せ100回を日課としている。