上達の指南
(4)「全部黒地」主張の最強手
(寄稿連載 2012/12/11読売新聞掲載) リーグ入りをかけた最終予選決勝の一局です。
【テーマ図】 碁盤右半分の形で明らかなように、この碁は立ち上がりからとんでもない乱戦が展開されました。その戦火はいまだやむことなく、現在は下辺でこれまた大変なコウ争いが繰り広げられています。
ここに至るまでの手順中でも見せ場は数多くあったのですが、僕が最もうならされたのが、白が1とコウを取った時に黒2と飛んだ、淡路先生の判断でした。
黒にはぴったりしたコウ立てがないので、仕方がない意味はあるのですが、白は当然ながら3とコウを解消してきます。そこで「黒4と飛んですべて黒地だ。入ってきたら皆殺しにするぞ」と腹をくくった度胸が素晴らしかった。
黒2や4でもう少し控えて囲えば確実ですが、形勢黒良しとは言い切れず、黒2、4の線で黒地となれば勝勢です。従って白は7と入ってきますが、「それは仕留めることができる」と判断を下したのです。
【1図】 黒1のカドで根拠を奪い、白2から10には黒11と眼形の急所を一撃。まさに本気の取り掛けです。
【2図】 白1から7にも、黒8と急所へ直行。この後も最強手を次々と繰り出し、ついに白の大石を仕留めました。
淡路先生と言えば「剛腕」が代名詞ですが、ハードパンチャーぶりが健在であることを示した一局でした。
●メモ● 淡路―鶴山戦には「大一番ならではのすさまじい気迫を感じました」と三谷七段。自身の経験を振り返って「リーグ入りをかけた最終予選は気合が入ります」とのこと。ちなみに過去の最高成績は第36期棋聖戦の最終予選準決勝進出。一刻も早いリーグ戦登場が待たれる。
第37期棋聖戦最終予選決勝
白 七段 鶴山淳志
黒 九段 淡路修三