上達の指南
(6)大石しのいだ絶妙のハネ
(寄稿連載 2012/12/25読売新聞掲載) 今回も非常にうならされた一手です。じっくりと味わっていただきたいと思います。
【テーマ図】 下辺の黒一団を白が本気で取り掛けに行っている場面です。その準備として白は左辺で△を決めるなど、多大な犠牲を払って包囲網を築きました。白1と並び、「黒イなら白ロ、黒ハ、白ニで仕留めることができる」というのが首藤七段の判断でした。
僕はこの碁をリアルタイムで観戦し、棋士仲間と検討しながら「黒にしのぎなし」との結論に至っていたのですが、ここで黒2とはねたのが素晴らしい一手でした。居合わせた誰もが気付かなかった絶妙手で、瀬戸七段の読みの深さにうならされた次第です。
【1図】 白1の切りなら、黒2から4のコスミツケです。白5と換わってから黒6と断点を補えば、中央への脱出とイの眼持ちが見合いで、ぴったりしのげるという仕掛けです。
【2図】 白1のツギなら、黒2のカケツギ。白3、5の封鎖には黒6、8の出切りで反撃して20まで。
このあと下辺での大攻め合いとなりますが、これは黒に分がありそうです。
【3図】 実戦で首藤七段は、白1の切りから3と、黒の尻尾を取り込んで我慢しました。しかし黒2から4と出て、さらに10まで中央のラインを制しては、黒が満足の分かれでしょう。結果も黒の中押し勝ちでした。(おわり)
●メモ● 瀬戸七段は関西棋院の躍進を先導する一人。28歳のイケメン独身。高梨聖健八段、謝依旻女流二冠と音楽ユニットを結成し、CDデビューも果たした。第36期棋聖リーグは2勝3敗で陥落したが、本因坊リーグは3期連続で参戦中。リーグ戦メンバーの常連となりつつある。
第68期本因坊戦最終予選決勝
白 七段 首藤瞬
黒 七段 瀬戸大樹