上達の指南
(3)張九段軽快な打ち回し
(寄稿連載 2016/11/29読売新聞掲載) Aリーグは5勝1敗の張九段と6戦全勝の蘇耀国九段が最終戦でぶつかり、この勝負に勝った張九段がリーグ順位上位の利を生かし優勝しました。来期、Sリーグでの活躍に注目します。小林九段の陥落は意外でした。
【局面図】白1(24手目)は2年前、井山裕太本因坊に伊田篤史八段が挑戦した本因坊戦七番勝負が北海道網走市で行われた際に伊田八段が打ち、「網走スベリ」とも言われました。全くの新手ではありませんが、タイトル戦で打たれたことに囲碁界関係者は驚きました。
白としてはイとつけ、黒ロ、白1の進行か、ハとすべり、黒ロ、白ニの進行が常識的ですが、伊田八段も張九段もそれでは物足りないと思ったのでしょう。
【変化図1】黒1と反発してきたら、白2と割り込みます。白8となり、黒Aのシチョウが成立しない上、黒の右辺の幅も狭いので白が満足できる形です。
【実戦図】黒2のコスミツケには白3が弾力のある受けです。白7、黒8まで、白が働いています。黒4でAと押さえるのは疑問です。
【変化図2】白は2と当て込みます。黒3には白4とふくれ、黒5の抜きに白6と当て、黒7のツギまでは白が利かせています。白8の開き詰めになっては白がやれそうです。
実戦図の白19まで、張九段は「うまくさばけた」と自信を持ったようです。軽快な打ち回しに感服させられました。
●メモ● 坂井八段は2010年、張栩碁聖に挑戦、3勝2敗で碁聖位を奪取した。関西棋院では橋本昌二九段の王座獲得以来、29年ぶりのタイトルだった。ほかに関西棋院第1位4期。リーグは名人8期、本因坊1期。今期棋聖戦はCリーグ。トップリーグで打ちたい、と精励している。
第41期棋聖戦Aリーグ
白 九段 張栩
黒 九段 小林覚