上達の指南
(5)伊田八段の鋭い決め手
(寄稿連載 2016/12/13読売新聞掲載) 伊田八段と鶴山七段は、次代を背負って立つ若手の逸材です。力のこもった熱戦を見せてくれました。
【局面図】黒1(173手目)の出から3とはねて、5のツケが鮮やかな決め手でした。白はノックアウトです。
黒5に白イと受けるのは、黒ロとつがれて、中央の白が取られています。
【参考図】局面図の10手前、▲と切りを入れたのに対し、△と実利を稼いだのが打ち過ぎでした。ここは白1と丁寧にあいさつし、黒2に白3とついでいれば形勢は白良しでした。黒はここから虎視たんたんと局面図の決め手を狙っていたようです。白は実利に走り、薄くなったのです。
【変化図】局面図の黒1に白1とつぐのは、黒2の切りから6まで絞られ、8のコスミツケで上辺がそっくり黒地となります。白敗勢でしょう。
【実戦図】白1に黒2とつぎました。白3と切って紛れを求めましたが、黒4から6まで白3子だけでなく左上隅も取られました。黒8子は取れていますが、とてもフリカワリとは言えません。勝負あった、です。
白3に黒5と抱えるのはいけません。白A、黒4、白B、黒6、白Cの切りでややこしくなります。
伊田八段の深く鋭い読みには感心させられました。さすがに若くして十段のタイトルを獲得しただけのことはあります。
●メモ● 棋聖戦Bリーグは1組と2組があり、それぞれ8人の総当たり制。各組、上位2人が昇級、下位3人が降級する。2人は1組。鶴山七段は2勝5敗で降級、伊田八段は4勝3敗で残留の成績だった。2人の対戦は最終戦で、勝敗が逆なら同星となり、順位が下の伊田八段が降級だった。
第41期棋聖戦Bリーグ
白 七段 鶴山 淳志
黒 八段 伊田 篤史