上達の指南
(6)中空を舞うような石運び
(寄稿連載 2016/12/20読売新聞掲載) 苑田九段は関西棋院の実力者です。天元戦、碁聖戦挑戦者などの実績もさることながら、ユニークな指導法や「美人は追わず」など独自の格言で人気があります。王二段は第2回会津中央病院杯を獲得しています。
【局面図】黒1(25手目)から7まで、まるで中空を舞うように美しい石の運びです。苑田九段の棋風は「西の宇宙流」と呼ばれるように石が上へ上へといきます。
左上の△が24手目でした。地の大に加え、模様を締める立派な一着ではあるのですが、苑田九段の中央志向を誘ってしまったようです。
【参考図】それではどこへ向かえばよかったのか。白1あるいはAと、模様の接点に先着すべきだったのではないでしょうか。こういうところは見た目より大きいとしたものです。
【実戦図】白1、3のツケ下がりはどうだったでしょうか。大きいには違いないのですが、Aの飛びを優先させたかった。
黒4のツケはモタレ攻め。白5はやむを得ないでしょう。黒地が盛り上がってきました。
【変化図】白1とはねて抵抗するのは、黒2のハネ返しが手筋になります。白3の当てから5のツギには黒6から8まで力強く押され、中央の白1子が立ち枯れになりそうです。
実戦図に戻り、黒8の伸びに白9の辛抱はつらかったでしょう。黒12のカドは好手。中央の白1子を大きく包み込むように攻めています。
●メモ● 坂井八段は関西棋院の故佐藤直男九段門下。同門に結城聡九段、古谷裕八段らがいる。兵庫県の小学生大会に出場した際、佐藤九段から子ども教室に誘われ、西宮市の自宅に通うようになったという。「師匠は碁にも礼儀にも厳しい人でした。そのことが今の私の原点になっています」
第64回NHK杯戦1回戦
白 二段 王 景怡
黒 九段 苑田 勇一