上達の指南
(1)趣向とがめる意表の切り
(寄稿連載 2007/11/05読売新聞掲載) ◆第32期碁聖戦本戦2回戦 (白)九段・羽根直樹 (黒)名人・高尾紳路
毎週、20局ぐらいは棋譜に目を通しています。日本の棋士が出場している国際棋戦があれば、30~40局ぐらいになるでしょうか。それにインターネットでもほとんどの対局を観戦していますから、最近は棋譜を並べる時間がありません。それでも新手らしきものや興味を引く序盤作戦などを目にした時は、並べて研究するようにしています。
今日から7回にわたり新手をはじめ、僕が感銘を受けた手、驚いた手などを勝手に選んで紹介させていただきます。
【局面図】 黒11ではイのノビがよく打たれ、白ロ、黒ハという進行が常識的とされています。黒11は韓国の李昌鎬九段(先番)が張栩碁聖を相手に打ったことがありました。白12の切りが新手でしょう。
【参考図】 白12を白1とつげば、黒2から10までの進行になります。これは定石だけれど、布石の配置から一応は黒の注文が通ったといえるでしょう。白3をAのスベリなら最も穏やかです。ただし、後から白3とハネ出しても、黒4とは切らず、5とハネられます。
【変化図】 新手に対して黒1のアテなら、白2の突き当たりから4と伸びます。勢い黒5から白10までの変化になりそうですが、黒の形はいかにも味が悪く、白に不満はありません。
白2で3のアテは、黒4と抜いてくれません。黒2の切りと反発し、白A、黒B、白ツギに、黒Cと下がって、意外に黒も戦えるのです。
【実戦図】 黒13と切って17と激しいことになりました。白18から黒27まではこうなるところのようです。白28、30とどんどんかさにかかって、白よしです。新手成功といえるでしょう。つまり、黒11がうまくいかないということになります。この新手は高尾名人も僕も知りませんでした。
●メモ● 結城聡九段は関西棋院所属。兵庫県出身で35歳。佐藤直男九段門下。1984年入段、97年九段。関西棋院四賞の最優秀棋士賞は93~95年、97年、02~05年と8回受賞している。もちろん最多。