上達の指南

結城聡九段の「今年この一手」

(6)素朴な押さえ 今村流新手

(寄稿連載 2007/12/10読売新聞掲載)

 ◆王座戦本戦準決勝 (黒)八段・蘇耀国 (白)九段・今村俊也

 今年、今村九段の活躍は「立派」の一語でした。棋聖戦リーグこそ最終戦に負けて陥落しましたが、王座戦では強敵を破り、山下敬吾王座への挑戦権を獲得しました。関西棋院の渉外担当理事という重責をさばきながらでの奮闘は、立派なものだと思います。中盤まではじっくり構えて厚く打ち、後半、一気に追い込んでいく棋風は、迫力に満ちあふれています。

 【局面図】 黒1、3、5は「ミニ中国流」と呼ばれていますが、僕は少し抵抗を感じます。白6に黒7と挟み、白8とつける形は、最近、流行の布石です。ここで白10と押さえたのが素朴ながら新手です。後の推移を見ますと、なぜ打たれなかったのか、不思議な感じもします。これまで白10では、ほとんど例外なくイと切り違えていました。

 【参考図】 黒2に白3のアテから5と下がるのが戦いの要領で、黒6に白7の二段バネがおもしろい手です。黒8から20まで、現在はこれが決定版に近い変化とされているようです。次に白はAとかかるものでしょうか。
 この参考図については苦い思い出があります。2年半ほど前、名古屋市で行われた日中の特別対抗戦で常昊九段と対戦した際、白7をノータイムで打たれたのにはびっくりしました。ここの変化を研究し、ある程度の自信を持っていた僕は、初めて見た手に動揺し、応接を誤ってひどい目に遭わされたのでした。

 【実戦図】 黒11から17まではこうなるところです。白18から黒21と切って、競り合いが始まりました。黒21では22の曲げもありそうです。

 【変化図】 白2のカケツギに黒3とはね、白8に黒9と切って黒13まで。この戦いは互いに石が張って、いい勝負でしょう。

 実戦図に戻り、白26はAの大ゲイマで競るのだった、と今村九段の感想がありました。実戦の進行でも、互角の形勢です。

●メモ● 結城九段の今年11月末までの成績は37勝15敗。7割を超える立派な勝率だが、NHK杯戦と竜星戦の準優勝以外、目立った活躍はなかった。95年の70局(50勝20敗)は関西棋院の年間最多対局記録。

【局面図】
【参考図】
【実戦図】
【変化図】