上達の指南
(2)隅と連動、コスミの「新手」
(寄稿連載 2007/11/12読売新聞掲載) ◆世界選手権・富士通杯最終予選決勝 (黒)十段・趙治勲 (白)九段・結城聡
世界選手権・富士通杯は今年、第20回の節目でした。僕は運よくこの碁に勝ち、本戦入りを果たせました。が、1回戦、胡燿宇八段(中国)との対局で序盤によく分かっていない手を打ち、一挙に苦戦に陥ってしまいました。まだまだ勉強が足りません。
【局面図】 左下、黒17の二間高挟みに白18と挟み返すのは、世界的にも打たれている流行の形です。白28をイとはねるのは、黒19の抜きに白30とついだ時、黒ロと大きく構えられて黒の模様がよすぎます。全く打つ気はありませんでした。黒33に白34のコスミ。これは日本では新手扱いですが、韓国では十分に研究されています。
【変化図1】 白34では白1のカケもありそうです。黒2、4の出切りに、白5、7と抵抗します。黒8から白11の時、黒12の鼻ヅケが好手。白14と逃げれば、黒A、白B、黒13で白2子はシチョウになります。白は15と割り打ちすることになるでしょう。好みの領域ですが、一局の変化だと思います。
【実戦図】 黒35から39までは一本道です。黒39のハネに白40のキリコミは攻め合いの際、手数を伸ばすための常とう手段です。ただし、多少でも隅に味を残すため、だまって白42と下がった実戦例が日本にもあります。これには賛否両論あると思われ、まだ完成されたとはいえません。今後も研究が進むでしょう。
黒43はさすがの打ち込みでした。白44とこすんで攻めます。上辺の白模様は谷が深く、白がやれるとある程度は自信を持っていました。
【変化図2】 黒43で1とダメを詰めて取りにいくと、白2から黒7まで。次に白Aと打てば一手寄せコウですが、白は手を抜いて8とコスミで固めます。この白模様は大きく理想形で、黒がよくありません。左上隅の白が小目にあるから成立した新手で、これがBの星なら黒Cの三々があって甘いのでした。
●メモ● 結城九段と妻、可菜子さん(旧姓堀田)の結婚式が10月20日、神戸市内のホテルで行われ、披露宴には約80人が列席。夫妻は生後4か月の長女、沙菜ちゃんとともに祝福を受けた。