上達の指南
(3)「日本で初」も中国に先例
(寄稿連載 2007/11/19読売新聞掲載) ◆第64期本因坊戦予選B (黒)五段・影山敏之 (白)二段・田村千明
韓国、中国の研究は想像を超えるスピードで進んでおり、とくに韓国の若手棋士たちのそれは、すさまじいばかりです。日本は一歩も二歩も遅れていると認めざるを得ません。関西棋院の若手にも見習ってほしいものです。
僕が関西棋院のいす席で対局していると、後ろでこの2人が打っていました。肩越しに「おもしろい碁を打っているな」とちらっとのぞいただけでしたし、記録係はついていませんから、田村二段に棋譜を書いてもらったのです。
【局面図】 左上隅、白16まではよく見かける形です。黒17のハネは見たことがありません。おそらく(日本では)初めての手ではないでしょうか。
ところが、日・中・韓の古い棋譜を検索したらあったのです。5年前、中国の第1期華潤杯という棋戦で、先番の聶衛平九段に対し、馬暁春九段が打っていました。恐ろしいもんですね。
【参考図】 黒17は1と下がるのが最も穏やかで、白2に黒3とはねるのが定石とされています。いつでしたか、小林光一九段は黒3でAとすべっていました。黒3では将来、白Bとのぞき、黒Cに白Dの押さえ込みを見られるのが気になる、と聞き、「神経が行き届いているな」と感心させられた記憶があります。
【実戦図】 白18から30までは、聶―馬戦と同じような進行をたどっています。黒31は影山五段の錯覚かうっかりミスでしょう。これは黒33とかけつがねばなりません。馬九段はそう打っています。白32をAとはね、黒33に白Bとついで黒のつぶれでした。
【変化図】 黒33のカケツギに対し、すぐに白2のアテからコウを仕掛けるのは、実戦図で黒C、Dを連打する振り替わりになりそうです。全局的な配置から、黒もけっこう打てそうな気がします。
黒31を33なら、「新手」のいい分は一応、通っていたのではないでしょうか。