岡目八目

菊池康郎さん

菊池康郎さん

(7)若手に意義深い国際交流

(寄稿連載 2006/03/27読売新聞掲載)

 昨年10月、明治神宮・文化館で、「05国際新鋭囲碁対抗戦」を開催しました。日・中・韓・台の新鋭8名ずつの団体対抗戦で、日本から羽根直樹、山下敬吾、中国は孔傑、胡耀宇、韓国は朴永訓、宋泰坤といったそうそうたる棋士が参加してくれました。結果は韓国が優勝し、日本は残念ながら3位でした。この対抗戦は、私の長年の海外交流の集大成といったものでした。

 私の海外交流の第一歩は昭和36年の第1回日中囲碁交流の訪中でした。中国は「日本に追い付け、追い越せ」をスローガンにはしていましたが、まだ日本のプロとは2子くらいの開きがありました。年配者の多い中で、1人だけ若者がいたのが陳祖徳さんでした。

 その後、何回か中国に行く機会があったのですが、行く度に地の底からボコボコと湧(わ)き出てくるパワーを感じ、次から次へと若い人を輩出してくるのです。こういう状況を肌身で感じたのが、「緑星学園」の誕生につながっていくのです。

 横道にそれますが、現在日本のプロ碁界でもよく打たれる「中国流」は、この当時生まれたのです。安永一先生が訪中したとき中国の若手に「こういう打ち方もあるんだよ」と教えたものを、彼らが日中棋戦で打ち、日本のプロも注目したのです。いわば中国から逆輸入し、日本で中国流として開花したのです。

 緑星学園でも、平成3年から数人ずつ連れて中国との交流を始めました。「何でもいいから一つモノにして帰ってきなさい」とハッパをかけ、リポートを提出させたりもしました。

 その後、韓国にも遠征し、当地の囲碁教室との対抗戦も行いました。中国、韓国合わせておよそ15回くらいは遠征しているでしょう。

 海外交流の意義は、直接先方の状況を目にし、肌で感じることです。

 冒頭の国際新鋭対抗戦でも、碁はもちろん、盤外でも大いに交友を深めたようですが、若いときの感動は一生忘れられないものです。

 今後も国際交流には力を入れて行きたいと思っています。

(緑星学園主宰)